農学部生物環境科学科のカリキュラムは、段階的に専門性を深める3つのステップで構成されています。
•基礎(1年次の全学教育科目)
科学的思考の基盤を養うため生物学、化学、物理学、数学、地球科学といった自然科学の基礎科目を学び、実験を通じて基本的な知識と技術を習得します。
•専門基礎(1年次以降の学部科目)
各系の専門領域への導入として生態学、土壌学、微生物学、バイオマス科学、生命情報処理などを履修し、より具体的な応用へ進むための基盤を築きます。
•専門(2年次以降の学部科目)
高度な専門科目として森林保護学、バイオマス変換化学、データ解析、流域保全学、生物プロセス工学などの実践的な学びを通じて、最先端の知識と技術を習得します。また、1年間を通した実験・実習により、多様な生物環境科学分野における具体的な調査・分析・解析手法を身に着けます。その後、研究室に所属し、専門的な課題に取り組みます。
当学科カリキュラムには様々な講義・実習があります。学問領域としては「生物共生系」「環境系」「資源利用系」の3つに整理され、複数の領域に関わる科目も多くあります。また4つめの「データサイエンス系」は各系で活用される計測・情報処理技術が主です。(※明確にカリキュラムが分かれるわけではありません)
以下では、それぞれの学問領域の特色・関連科目を紹介します。どの領域で、より専門的な知識を身に着けていきたいのかを考えながら、選択科目を選ぶことになります。
生物共生系
◆概要
多様な生物が生息する森林環境を守り、人と自然が共生する社会を目指します。フィールド調査や生態学的視点を通じて、森林生態系の保全と管理のための知識と技術を学びます。
◆キーワード
森林、フィールド調査、生物間相互作用、保全、管理
◆対応するカリキュラム例
•基礎: 生物学(基礎・実験)、化学(基礎・実験)
•専門基礎: 生物化学、生態学、分類・形態学、遺伝学、土壌学、微生物学、植物生理学、昆虫科学、動物形態学、生物圏環境学、分子細胞生物学
•専門: 森林保護学、森林生態学、保全遺伝学、生物環境計測学、森林資源管理学、森林社会共生学、緑地環境学、農林行政論、国際森林資源論
環境系
◆概要
生物を取り巻く環境(土壌、水、大気)と生物との相互作用を理解し、持続可能な社会の形成に貢献します。フィールド調査や環境計測を通じて、物質循環や環境変化のメカニズムを解明します。
◆キーワード
生物圏、物質循環、環境変化、生物環境相互作用
◆対応するカリキュラム例
•基礎: 生物学(基礎・実験)、化学(基礎・実験)、物理学基礎、地球科学(基礎・実験)
•専門基礎: 無機化学、土壌学、微生物学、植物生理学、動物生理学、生物化学、昆虫科学、動物形態学、生物圏環境学
•専門: 生物環境計測学、流域保全学、森林資源管理学
資源利用系
◆概要
森林・環境資源、特に木質バイオマスを高度利用するための知識と技術を習得します。木質材料の構造や性質の解析を通じて、機能性物質の開発や持続可能な循環型社会の実現を目指します。
◆キーワード
木質形成、材質発現機構、力学・物性解析、樹木整理活動、先端計測システム、機能性物質
◆対応するカリキュラム例
•基礎: 生物学(基礎・実験)、化学(基礎・実験)、物理学(基礎・実験)、微分積分学、線形代数学
•専門基礎: 無機化学、有機化学、生物化学、遺伝学、バイオマス科学、生物材料組織学、生命物理化学、生物材料力学
•専門: 樹木生化学、木質環境学、生物材料機能学、農業・資源経済学、森林資源管理学、木質保存環境学、バイオマス変換化学、住宅科学、設計製図、生物プロセス工学、応用数学
データサイエンス系
◆概要
情報通信技術(ICT)やAI、リモートセンシングなどの先端技術を活用し、ビッグデータの取得と分析を通じて農林業や環境管理に革新をもたらします。スマート農業やスマート林業といった新たな社会形態に対応するスキルを学びます。
◆キーワード
統計学、ICT、AI、リモートセンシング
◆対応するカリキュラム例
•基礎: 微分積分学、線形代数学
•専門基礎: 情報データサイエンス基礎、生物情報処理演習、生命系物理工学
•専門: 生物環境計測学、森林資源管理学、生物プロセス工学、応用数学
3年生で行う実験・実習では、3つの系に関して以下のような内容に取り組みます。各系において、データサイエンス的手法を活用します。
① 生物共生系
森林や自然環境における生物の共生関係を探るための幅広い実習を行います。具体的には、林内光環境の測定や樹木の特性評価、炭素貯留量の推定、昆虫や線虫の採集と分類、菌類の観察・培養など、さまざまな野外調査手法を学びます。また、植物採集やおし葉標本作成を通じて樹種識別能力を養い、森林動物の捕獲方法や繁殖成功の評価にも取り組みます。こうした調査や分析を通じて、多様性の解析方法や里山管理の実践知識を身につけることを目指します。
② 環境系
自然環境や人工環境における測定と解析に焦点を当てています。具体的には、土壌や河川水、大気の分析、人工林の調査、森林計画の議論、さらには気象データの計測や解析を行います。衛星画像を用いた植生分類や地理情報システム(GIS)を利用した解析の基礎、砂防施工現場の見学など、環境データの取得から解析までを幅広く学習します。こうした活動を通じて、環境保全や管理のための科学的な考え方と技術を習得します。
③ 資源利用系
木材や植物を含む自然資源の効率的な利用と、関連する技術の習得を目指します。木材の組織観察、物理量測定、構造設計、木質バイオマスの化学変換、電気計測やプログラミングの基礎学習を通じ、資源利用の最適化を学びます。また、樹種識別や成長応力の理解、木材力学試験、有機化学実験など、資源を活用する技術と知識を総合的に習得します。
また、総合実習として、国内外の森林に関するディスカッションを通じ、国際的な視点で資源利用を考える力も養います。
合宿実習について
3年次に、【稲武・設楽フィールド】で合宿実習を行っています。稲武・設楽フィールドを日帰りで利用する実習は他にも何度かあります。
実験実習の様子については、大学院生TA(Teaching Assistant)による写真をX@nu_agr_seikanで随時発信しています。